(1)社会保険の適用を拡大する改正法の成立
従前、社会保険が適用される被用者は、「フルタイム従業員」及び「週労働時間がフルタイムの3/4以上の従業員」でした。しかし、多様な就労を年金制度に反映するため、短時間労働者にも社会保険の適用を拡大する改正法が2020年に成立しました。
(2)改正法の適用対象となる企業を定める企業規模要件
この改正法は、企業規模に応じて段階的に適用されています。現状は従業員数が常時501人以上の企業が適用対象ですが、2022年10月からは「従業員数が常時101人以上」の企業が適用対象となります。
ここにいう「従業員数」とは、「社会保険の被保険者数」を指します。すなわち、「フルタイム従業員数」+「週勤務時間がフルタイムの3/4以上の従業員数」です。法人の場合は法人番号が同一の全企業を合計して、個人の場合は個々の事業所毎に集計します。
「常時」の意味にも注意が必要です。「常時」とは、直近12ヶ月のうち6ヶ月で基準を上回る場合です。2022年10月時点ではありません。
(3)社会保険が適用される被用者要件
改正法は、「従業員数が常時101人以上の企業」に対し、次の4要件に該当する被用者を社会保険の被保険者とすべきことを求めています。
労働時間要件:週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
(※所定労働時間が40時間の企業の場合)
契約上の所定労働時間であり、臨時に生じた残業時間は含みません。
※契約上20時間に満たない場合も、実労働時間が2ヶ月連続週20時間以上で、なお続くと見込まれる場合、3ヶ月目から社会保険の適用対象となります。
賃金要件:月額賃金が8.8万円以上
基本給及び諸手当を指します。
※この要件での「月額賃金」の算定に含まないものの例
賞与、割増賃金等、精皆勤手当、通勤手当、家族手当等
学生除外要件:学生ではない
※休学中や夜間学生は加入対象です。
勤務期間要件:2ヶ月を超える雇用の見込みがある
法改正により「雇用期間が1年以上の場合」という要件が撤廃され、フルタイム労働者等と同じく、2ヶ月を超える場合となります。
社会保険料の負担は企業にとって非常に大きいものです。適用拡大後の社会保険料負担を意識した労働時間および労働日数の設定を含め、今後、従業員をどのように活用していくか検討していく必要があります。