今回は、労働災害が発生したとき慌てることなく対応するためのポイントについて解説いたします。
「労働災害発生時対応マニュアル」の整備と事業所内での周知(事前準備 )
労働災害が発生したときに慌てず適切な対応ができるように、発生時の報告体制(内部・外部)、医療機関等への搬送や連絡手段など、「誰が」「どのように」行動するのかについてマニュアルや連絡網などを整備するとともに、事業所内で周知を行いましょう。
※最寄りの「労災指定病院」を把握し、リスト化しておくとその後の労災請求時の手続をスムーズに行うことができます。
労働災害発生時の対応手順
医療機関への搬送または受診指示
まずは、最優先で被災した従業員の救護を行い、負傷や事故の発生状況の確認を行います。そして災害の規模や症状の重篤度に応じ、医療機関への搬送(同行)または従業員へ病院での受診を指示します。
医療機関の窓口では、必ず労災事故であること伝え、健康保険を利用しないようにしましょう。
労災の場合は労災保険からの給付を受けることになるため、誤って健康保険を利用した場合、その後の手続きが煩雑になります。(なるべく労災指定病院で受診を行いましょう。)
労災請求書の作成及び提出
受診した病院が「労災指定病院」の場合
従業員が労災請求書を病院に提出することで、自己負担なく診療や治療を受けることができます。
ただし、受診当日は労災請求書の準備ができないため、いったん窓口で医療費の10割を負担し、後日労災請求書の提出と引き換えで返金を受けることができます。
受診した病院が「労災指定病院」以外の場合
診療や治療にかかる費用の10割をいったん自己負担することとなります。その後、支払った医療費等の領収書を添付して、労働基準監督署へ労災請求書を提出することで従業員の指定した口座へ振り込まれる流れとなります。
※労災保険の給付に関する「請求者」は「被災した従業員」ですが、事業所の証明事項などもあるため、労災請求書の作成に関してできる限りサポートを行いましょう。
労働者死傷病報告書の提出
労働災害により4日以上の休業が見込まれる場合は、労災発生ごとに「労働者死傷病報告」を作成して、労働基準監督署に遅滞なく報告することが義務付けられています。
なお、休業1~3日の場合は、一覧表形式になった別様式によって四半期ごとに取りまとめて報告を行います。労働者が休業しなかった場合には労働者死傷病報告の届出の必要はありません。
※4日以上の休業が発生した場合、労災保険から休業補償給付(平均賃金の60%)を受けることができます。
社会保険労務士へご相談ください
労災保険の請求手続きは、発生頻度も低いため戸惑うことも多いと思いますので、ぜひ社会保険労務士へご相談ください。